肝移植のタイミング
肝移植は手術のタイミングが大変重要となります。ご相談に見えられる方の中には症状がまだ初期段階で肝硬変も進んでおらず、癌も見当たらない状態であっても病気に対する恐れから早く移植をしなくては手遅れになると思い、慌てられる方もいます。一般論として余命が3年以上あればまだ手術の段階ではありません。
それとは逆に外見はとても元気で普通に仕事をされている方でも肝臓以外に癌の転移があれば移植手術はできません。それは移植後の拒絶反応を抑える免疫抑制剤を投与すると転移した癌細胞が一斉に増殖し始める危険性があるからです。移植した肝臓は元気になったとしても転移した癌により数年の寿命しか望めません。このような場合は肝移植不適格とされ手術は行なわれません。昨年は3名の方が折角現地に行かれたにも拘わらず手術不適格となり大変残念な結果となりました。
癌の進行がどの程度までなら肝移植ができるのかはとミラノ基準(詳しくは下記リンク)を参考にしてください。これは医学的根拠に基づいた国際基準なので米国や中国においても準じた適用をしています。
※中国ではミラノ基準外でも患者さんの病状を総合的に判断し手術が行われる事が多々ございます。ただし、その場合は開腹時に内臓全体を目視にて癌の有無を調べ、もし肝臓以外に癌が発見された場合、移植手術は中止となります。(条件付き肝移植)
患者や家族の方は大きな期待を胸に現地入りされます。到着された翌日から集中検査をして3日後にはその結果が伝えられます。現地では多い日には数例の肝移植が行われています。その様子や他の術後の患者さん達を目のあたりにするので、いやおうなくとも肝移植に対する自信や期待が高まります。
肝硬変が進んだ患者さんは外見的にも体力の衰えが感じ取れます。またご本人も息切れや疲労感、黄疸、腹水などの自覚症状が現れ病気に対する心構えをある程度お持ちになっています。
末期の肝硬変は余命数ヶ月でも肝移植により劇的に快復する症例です。昨年中も余命2カ月を切った患者様(女性・65歳)の方が現地到着後3週間で手術をされ大変元気になられて帰国されました。歩くこともかなわず、日本の病院からは寝台タクシー、現地では救急車にて搬送する状態でしたが、術後5日目には車いす乗り通常の和食1人前を平らげるまでに快復されました。
それに対して肝臓がんは自覚症状が少なく本人は至って元気な様子で、現地に着いても周囲に冗談を話たり、同僚や部下に電話して業務の打ち合わせや指示など精力的にこなされる方も見受けします。しか、そんな方でも検査の結果、病状は肝移植ができないほどに進行しており、どうにもならない状態と告げられることも稀ではありません。「青天のへきれき」とはまさにこの事です。
肝臓は全体の40%程度機能していれば少しの疲れは感じても通常の生活はできてしまいます。それ故に肝臓がんの患者さんは手遅れになりがちです。また体の調子が悪いからと病院に行った時には、既にミラノ基準すれすれ、又は基準外の方もいます。
また医師からは病状が家族に知らされてもご本人へは正確に伝えられないケースもございますので以下の点に留意してご自身が冷静に判断することが何よりも大切です。
(1)自分の病状はどうなっているのか
(2)治療方法はあるのか
(3)移植手術は有効か
医学の進歩により肝臓疾患は適切な時期に移植手術を行えば完治または10年以上の長期間に渡り健常者と変わらぬ生活が可能な時代になったことを知って欲しいと思います。 |