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現地でのエピソード 第六話~家族のドナー~ 2019年03月14日

第五話で身内から肝臓を貰える確率は2%と申しましたが、腎移植に関しても患者数を手術件数で割って推計すると、肝臓より少し多い3~4%程度と思われます。腎不全の場合は透析をすれば一定期間生命は繋ぎ止められるが、やはり移植への願望は強く、置かれた心境は肝移植と同様で、ご家族によるドナー提供に大きな期待を寄せられています。
 6年程前にこんな事がありました。北海道在住の40代の女性からで、弟が透析をしており、海外移植の現状はどうなのか調べているとのお話でした。
私は、患者本人の意向が重要となるのでご一緒に来れませんか?と尋ねた所、本人は来ることは出来ないとの返事でした。
わざわざ北海道から飛行機に乗って見えられるのだから、余程真剣に考えられているのだろうと思い、面談する事にしました。
お姉さんと30代と思われる、スーツにネクタイ姿の男性が入って来たのです。挨拶もそこそこに、渡航に関するガイドブックの説明をすると、矢継ぎ早に各種の質問をし、私の返答に几帳面にノートへ筆記されていました。
暫く経ってこちらから病状を尋ねたら、なんと患者さんの弟さんとの事で、患者さんを挟んでお姉さんと弟さんが、わざわざ北海道からお越しになられたのです。
話を聞けば、前日から東京に来ており、既に2カ所の海外渡航移植をサポートする団体と面談し、私共が3番目でした。
一通りの説明を終えた後にガイドブックには重要な事が記載してあるので、ご本人にもよく読んで頂くようお伝えて下さい。そう話すと女性は『いえ!もうここに決めました。』と言うなり姉は弟に視線を向けると弟さんは物柔らかな顔で『お願いします』と言われるので『ご本人の意向はどうなのですか』と聞くと、お姉さんが『私が説得するので大丈夫です』そして続けて言われた事が『実は、、弟は私達の腎臓を狙っているんです』2人は顔を見合わせて話されるので、私は『そういう事なのですね。費用はどうなさるのでしょうか』と聞くと親が出すことで内諾を受けて渡航移植サポート団体を回られたとの事でした。
 その後、無事手術が行われ、帰国の機内で患者さんは『お姉ちゃんも弟も俺に腎臓をくれるというけど、海外でやって良かったよ、貰ったら一生頭が上がらなくなるからな~』と仰っておりました。
※前回に引き続き今回も、患者様とご家族の内心を赤裸々語ったエピソードになります。この記事を読まれた方の中にはやや衝撃的に受け取ったかたもいらっしゃったかと思いますが、あえてこのまま記載いたしました。今回登場されたご家族(姉、弟)についてやや批判的な目を向けられる方もいらっしゃったかと思います、このエピソードの中でお伝えしたかったのは前回と同じく、家族間の移植については特に、よく話し合い互いが希望した上で実施されるべきということです。当たり前の話に聞こえるかと思いますが、実際にこのエピソードのような心境で面談に来られる患者様は数多くいらっしゃいます。しかしそれは批判されるべきものではなく、当たり前のシチュエーションなのです。私自身ドナーになるという状況に置かれるのであれば不安や健康面は問題無いだろうか等々、色々と心配し非常に悩むでしょう。
国内移植に関しては海外渡航移植に比べ、医療費も非常に低く抑えられ、その他多くのメリットがあります。決して渡航移植を推奨するわけではなく、ドナー及びレシピエント側に少しでも後ろめたさがあれば実施されるべきではない。という事をお伝えしたくこのエピソードをご紹介しました。



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